公的年金だけに頼った生活設計だと、老後に2000万円足りなくなる、とした金融庁の報告書は、大きな議論をよび、この週末にある参院選の大きな論点にもなっていますね。
まあ、選挙の争点として取り上げられる理由は、与党のアラをつつきたい、という野党のもくろみが見え隠れしますが、まあそれは置いておいて。
もし、「老後のために2000万円足りないから貯める必要がある」といわれて、「ええ!それ無理!」「そんなに貯められない」と思った人は、二つの意味で要注意です。
それは、貯蓄金額が足りない、という問題ではなく、もっと根本的なところに問題があります。
「2000万円足りない」という誤解
「2000万円貯められない」と思った人が危険、という一つ目の理由。
2000万円という金額は、金融庁がとある人をモデルに、ごくごく一般的にはじき出した金額です。
金融庁が試算のために想定したモデルをAさんとします。
その計算で導き出された2000万というのは、想定したモデルAさんだけのものであり、あなたのものではありません。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190522/01.pdf
あなたの年収はAさんと同じですか?
あなたの家族構成はAさんと同じですか?子どもの人数は?
あなたの住まいはAさんのごく近隣ですか?
あなたはAさんと同じぐらいの相続資産がありますか?
あなたの趣味は、Aさんと同じぐらいお金のかかるものでしょうか?
あなたの子どもは、Aさんと同じような学校に通っていますか?
あなたはAさんと同じぐらい、定期検診の結果が良好ですか?
あなたはAさんについて、どれだけ知っていますか?
・・・
たぶん、多くの人がAさんのことなど知らないのではないでしょうか。
まず、年収によって大きく収入額は変わるはずですし、家族構成、お金の使い方、趣味、居住する場所、健康状態。これらで、生活するのに必要な金額も大きく変わります。
私も、想定されたAさんのことなんて、まったく知りませんよ。
だから、想定された不足額2000万円なんて、全く意味がないんです。おそらく、参考程度にもならないでしょう。もし、参考になるとすれば、足りないかもしれない、と感じたことだけ。
Aさんとあなたの暮らしは違うのだから、当然必要な金額も違うのは当たり前です。だから、2000万といわれるままの金額を鵜呑みにしてはいけないのです。
もしかして、2000万も不要かもしれないし、2000万じゃたりないかもしれません。
自分の必要な額を知らないのは無頓着すぎる
「2000万円貯められない」と思った人が危険、というふたつ目の理由。
一つ目の理由のように、「Aさんの2000万不足するケース」を自分の金額にすっぽり当てはめてしまった人は、そもそも自分の必要になるお金を知らないから安易に「自分も2000万足りない」そう考えてしまったのでしょう。
自分に必要なものがわからない。だから足りるかどうかもわからない。だから老後の生活に対する不安が払拭できないのです。
もちろん、誰もが何歳まで生きるかわかりません。
だから、どれだけ必要なのかわからず、不安になるんです。
老後のお金を貯めるのも大切なことですが、それよりも自分に将来どれぐらい必要かどうか試算してみるほうが、不安を低減させるには有効です。
将来のお金に対する不安感は、お金がないからじゃありません。
不安なのは、自分がなにに、どれぐらいお金をつかうのかわかっていないからです。あと、どれだけあれば十分なのかわからないから不安なんです。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190522/01.pdf
↑なんと、40代の3割が老後の生活設計を考えていない?
これは、貯金ができていないよりマズイと思うのですよ。
もちろん、人生は予定通りにはいきません。
病気や離婚、失業、入院など、予想以上の出費はあるでしょう。逆に、遺産相続による思わぬ収入やインフレや投資による配当金などが予想以上の収入になることも。インフレになれば、貯金は相対的に減額しますね。
でも、いいんです。不確定要素は、いろいろありますが、大丈夫。
あなたの未来予想図は、だれかもわからない「モデルケースAさんの場合」の試算よりも、ずっとリアルな数字が出るはず。
まず、必要なものを整理してみたら、不安な気持ちがすうっと、軽くなります。
報道やうわさを鵜呑みにしない。
新聞やテレビで言われていることは、事実ではなく報道側のフィルターがかかっています。
だから、事実とは実は異なっていたり、歪められていたり、または切り取った一部だけで誤解を生じたりするものです。
その2000万円、あなたのことではありません。
でも、それをきっかけにして、あなたが老後いくらいるのか考えるきっかけにしてくださいね、というメッセージと、良いように受け取ることにしましょう。
報道に惑わされすぎず、これを機会に自分の頭で考えて、『我が家の場合は?」を冷静に判断したいと思います。
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